60才を過ぎてデビューを果たした魂のピアニスト、フジコヘミングさん。
この映画は彼女が描いた可愛い絵日記と一緒に、彼女自身の壮絶な人生について語られている。
映画の中で私が感じたのが、挫折と苦労を繰り返した人ほど他人にやさしくできるということ。
海外留学をしようと思ったら自身の無国籍が発覚。晴れ舞台の前日に聴覚を失い、コンサートができなくなる。
そうした苦労を乗り越えてきたから、貧しい人に施しをし、倒れた花の苗をそっともとに戻してあげられる。
この慈悲や優しいさ、苦労がピアノにも表れている気がした。
フジコさんは映画の中で
ピアノを弾くときには精神状態が出る。ピアノ一つ一つに色をおくように、絵を描くように弾いてる
と、ピアノについていくつか語っているが、私の中で印象に残っているのは
昔は家でも何でもいろんな形があった。今は同じでつまらない
というような言葉。これはイラストやファッション、いろんなものに言える気がする。
フジコさんのピアノの弾き方も、精神や耳の状態、ピアノによって変わってくる。コンサートホールのスタッフにボロピアノを用意されて落ち込むシーンは、とても辛かった。
映画の中で私が特に「フジコさん凄い…」と、息をのんだのがベートーヴェンの「月光」。テレビ越しに音色が体の奥にズシンと響いた。心拍が上がって気持ちが高揚して、なぜか涙が出てきた。
なぜ泣いたのか自分でもわからないが、ただ、80歳を過ぎた彼女が魂を込めて芸術を作り、それが世界の人を引き付けてやまないという事実。
フジコさんの人生はまさに苦難の連続で、誰もが通れる道じゃないのは明らかだった。
こうした偉大な人物に勇気づけられる人は多いと思う。
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